〈ColorSing〉にてライバーとして活動中。
「この土地から何か面白いことを起こしたいんです。それは、飛騨に息づく文化やそれに携わる才能たちに、より多くの人から目を向けていただくためにでもあるんです」。そう話すのは〈芳国舎〉現当主として陶芸家としても活動する松山功次郎さん。江戸末期から続く名窯であっても、コロナ禍があったことは大きかった。
昔は10人以上いた職人さんも、今では家族のみの経営になり、これまでにない危機感を感じた時に見えてきたのが、「いくらいいものを作っていても、いまのままではその“良さ”が伝えられない」という現実だった。だが視点を変えて改めて考えることで、器と過ごすという心豊かな「時間」こそが〈芳国舎〉の器の本当の価値観であることを再認識したという松山さん。
「そこで考えたのが、まずは生活必需品ではない、文化的なものや芸術的なものに目を向けていただくことが必要なんじゃないか?ということだったんです。そこから、作陶の活動に限らず別の表現を通してコミュニケーションすることで、多様な文化や芸術の存在を知ってもらうのがいいんじゃないかな?と。だったら自分の好きなことから、どんどんやってみようって」。
彼が足を踏み入れたのは、器作りとはまったく様相の異なる歌好きなリスナーと歌い手をつなぐライブ配信の世界だった。「元々歌うことはすごく好きだったんです。使っているのは〈ColorSing〉というアプリで、審査を経てライバーとなり、〈紅一朗〉というアーティスト名で1年以上前から、歌を通してリスナーとつながる配信を続けています」。
すでにオリジナル曲の制作も手掛けている彼だが、そんな楽曲作りを通じて気づいたことがあった。それは、作品への共感でつながるお客さんと表現者のあり方が、実は器の世界と「似ている」ということだった。
「器もお客さまのニーズがその創作に深く関わっています。ものづくりはお客さまあってこそ。〈芳国舎〉の歴史は実は、その時代その時代のお客さまと作り手の歴史でもあるんです」。だからこそ、ただただ不特定多数に対して発信を行うのではなく、しっかりとコミュニケーションをとりながら行う発信を模索していた彼にとって、この配信は「ようやく見つかった1つの答え」なのだという。
「飛騨にも楽曲を作っている人もいるし、別の表現でものづくりをしている人もいる。ここがそういう表現者と受け手をつなぐ場になることで、飛騨から大きなうねりを作り出せるんじゃないかと思っているんです」と今後を見据える松山さん。
器の魅力でもある呉須の青は、釉薬が溶けたガラスの向こうにある。だからいつまでも色褪せない。この美しき器をきっかけとして、飛騨の文化的な土壌を耕す音楽からのアプローチがいま、歴史ある工房から始まっている。



















