

今年はレイチェル・カーソンの「沈黙の春」からちょうど63年後に当たる。その著書で訴えたのは、DDTを始めとする殺虫剤や農薬などの化学物質を使い続ける危険性であり、鳥のさえずりが聞こえず、生き物の出す音の無い春(沈黙の春)がこのままだとやってくるという警鐘が込められた文章は、中高生の教材にもなっている。
「私には農薬を使わない農法に目覚めた原風景があります」と今井さん。「20歳を過ぎた頃、穂が出た田んぼで粉末薬剤をまいて帰ろうとした時に、大きな2匹のミミズが跳ね回って苦しんでいる姿が目に止まり本当に衝撃を受けました。農薬を地中に浸み込ませて、自然に利益をもたらす虫であるミミズを殺す行為は、人間にも害を及ぼすと容易に想像ができたからです」。
環境・農薬問題は、生産者や食品に関わる事業者だけの問題ではなく、はたまた消費者だけの問題でもなく、両者がそれぞれの立場で考えていかなければいけない。消費者が「農薬を過剰に散布したものは買わない」という意志を示さなければ、生産効率をあげるために農薬漬けの農産物が作り続けられる。消費者の意識が高まり安全な食べ物を求めるようになれば、結果的に生産者や加工業者などが変わらざるを得なくなる。安心安全な食をこの先も享受していくために、消費者一人ひとりが、自分や家族が口にする食べ物について、関心を持つことが必要だろう。
基調講演の後は、第一線で活躍するプロが食の未来を徹底討論するトークセッションを予定している。鈴木氏と共に、食べ物と精神の関係を研究している益田大輔さん(〈須田病院〉 精神科医長)、創業120年を超えるお米屋〈匠こめよし〉 の4代目 野田沙希さん(〈株式会社米由〉 代表取締役)、東京から飛騨市へ移住後「自給自足」の思いから田畑を始めた佐野朋之さん(〈サノライス〉 代表) 、この企画の発起人であり安心安全な米作りを追求する今井 隆さん(〈株式会社龍の瞳〉 代表取締役)、の4名が登壇。
「飛騨では菌ちゃん先生こと吉田俊道さんの自然農法の講演会も開催されており、さまざまな角度で食について議論できればと思っています」と今井さんは意気込みを語る。未来の行き先を決められるのは、いまを生きるわたし達。令和の米騒動といわれる昨今、「食」に向き合う機会にしたい。
about
岐阜県高山市千島町900(Google map)
開場 12:00 開演13:30
※オンラインチケット制
0576-74-1191