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ローカルガイドが開く、新たな旅の在り方。

Editors journal | 2026.11.04

ローカルガイドが開く、新たな旅の在り方。

社会貢献

AT HIDA

会長 杉山知子 → S

副会長 山腰京平 → Y

杉山知子|高山生まれ高山育ち。アメリカでスノーボードのプロとして活動後、帰郷。現在、エコツアーガイドとして国内外の多様なゲストを飛騨地域の人々とつなぎ、四季や文化を感じられるサイクリングガイドツアーを運営。

山腰京平|アクティビティと自然、文化の3つの要素を組み合わせたツアーガイドを展開。丹生川町に一棟貸の宿「JINEN」を開業し、訪れた方と地域とのつながりをつくり、旅の思い出がより豊かで深いものになるよう活動中。

コロナ禍前を上回り加速していく、飛騨を訪れる観光客たち。地域の名産を食べたり買ったりして気軽に楽しめる観光もありとした上で、本当の意味で、地域の本質に触れられる観光の在り方はないものか?「旅の目的として選ばれる高山」を見据えながら、地域の暮らしとシンクロする「旅の在り方」を模索し始めた〈ATHIDA〉とは?

ー まずは立ち上げの経緯を教えて下さい。

わたしは10年ほど前に通訳の資格を取ってガイドの仕事を始めたんです。その中で、コロナ禍を経て世界中からそれ以前よりも多くの人が高山に足を運ぶようになったのに、本当に一部にしか触れないで帰ってしまうことをもったいなく感じていたんですね。この地で暮らしを営む人に出会い、豊かな自然や歴史や文化に触れてこそ実感できるのが高山の良さだし、それに実際、高山には面白いことも面白い人もたくさんいる、笑。もっとこの地域の人に会って欲しいし、地域の暮らしを見て欲しい、それをつなぐ役としてローカルガイドがいれば面白いと考えたし、ここにしかない魅力を体感してもらう旅のスタイルが、高山の街に合っていると思うようになったんです。こうした自然や文化や暮らす人との出会いを「体験」できる旅のスタイルはアドベンチャーツーリズムと呼ばれていて、実は世界ではけっこう主流の旅の在り方になっているんですが、日本ではまだまだ発展途上な感じ。だったら自分のできるかたちでまずできることからやろう、と思ったのがきっかけです。そんなことをいろんな現場で一緒になる山腰くんと話してみると、実は彼も同じようなことを感じていて。

うんうん。僕もたぶん知子さんと同じ頃にガイドになっているんですが、なんかこう目指すところが似ていたんですよね。コロナ前は街中のガイドをしていたんですが、コロナ禍の閉塞感からアウトドアを求めるニーズが生まれたことでネイチャー系のガイドを始めて。そこで、自然を体感したり、地域の人との出会いのある旅のツアーを始めたら、そちらの方が「高山の本当の価値が伝わる」と、腹落ちした、というのかな。食べ歩きも1つの観光スタイルだけど、自分が目指すのはそこじゃないかもしれないと。

ー 実際にはどんなツアーを?

わたしのツアーではサイクリングがメインで、ローカルな場所をイーバイクで巡って季節を楽しんだり、古民家に暮らす人の住まいを訪ねて、そこでお茶しながらその暮らしに触れてもらったり。

僕はハイキングがメインで、飛騨牛の堆肥を肥料にして、いわゆる循環型農業をしてる農家さんへ連れて行って、野菜を収穫して食べてもらったり、その集落の神社に行って、神事に関する話を聞かせてもらったり。僕らがいただくツアーの収益の一部を、その集落の町内会へも入れさせてもらって、それは地域の里山の景観を守るために草刈りした人への費用として使われています。そうやって収益が還元できるようなツアーをやってますね。

観光って宿や飲食の人ばかりにお金が落ちるイメージだけど、観光客がこの地域を楽しむ姿を見て、自分たちの地域の魅力を再発見・再認識する、そのきっかけをくれるのが観光だと思うんです。とにかく日本という国は世界から見たら本当に独特で、この国が他の国からどう見えるかを感じるのも毎回面白い。ツアー客を連れて行くと、そこのおばちゃんたちからは、「わたしたちはここから出たことないけど、あんたがいろんな人たちを連れてきてくれるもんで面白い」といってもらえますね。

ー こうしたツアーの在り方で、この先に目指すのは?

ガイドって実は一匹狼というか、個人で動いているんです。でもやっぱり1人で動いても大きくは表現しづらい。この新しい旅のスタイルを表現して行くにはもっとつながり合うことが必要な時期に来たと感じています。

ガイド同士はもちろん、異業種ともつながり合って、地域の人や場所、知識を広げて、より多くの人により「深い」高山の魅力を届けることができる。そんな高山らしいローカルガイドの仕組みを作っていけたらと思っています。

先日、こうした活動をかたちにして行こうと、高山の多種多様なガイドたちが集って、その悩みや思いを聞く交流会を開催したんです。そこで実感したのが、地域の人たちと顔の見える関係性のある僕らローカルガイドだからこそできることがある、ということ。いまはそれぞれのガイドが個で持っているつながりを、ガイド同士で共有して広げて行くことで、観光で得た収益が地域に還元できたり、地域の魅力を再発見することで、それが地域に暮らす人の誇りになる。そんなことを目指していけたらいいと考えています。

高山へはたくさん観光客が来るけれど、実は立ち寄り地・通過点になっているのもまた現状。ここでしかできない「体験」やここでしか出会えない「人」を通じて、「選ばれる目的地」高山になればいいな、と。さらに言えば、ガイドという仕事が社会的に認知されて欲しい、というのもありますね。

ガイドが地域の仕事の中のいい選択肢になればうれしいですよね。

そう、クリエイティブな新しい仕事としてね。副業として取り組む人がいてもいいし。やっとこういう座組ができたところでもあるので、これからがチャレンジ。

来年からももっと広げていきたいですね。

これは2026年10月25日発刊の月刊BLESS誌面にて掲載された内容です。

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