就労継続支援B型事業所 自然栽培カフェ & ITワークス 高山上宝ベース / 紡木ユウコ
やさしく輝く太陽、稲穂が実る畦道、空を見上げながら歩く女性ー取り出された額縁に収められていたのは1枚の絵画、ではなく刺繍だった。
「この表現方法は独特だということで、刺繍を習った先生に“手描き染め刺繍”と名付けてもらいました」と語るのは、紡木ユウコさん。よくよく見ると青空の部分は染めて描かれている。
刺繍をする以前は水彩画を描いていた紡木さんは、フランス刺繍を習い始めた時にそれらを組み合わせ、新たな手法での作品を作り始めた。水彩画の感性と、100種類以上のステッチがあるとされるフランス刺繍の技術が相まって、繊細な色調の作品ができあがる。
どこか懐かしい気持ちにさせる牧歌的な風景は「私のその時々の心象世界ではありますが、故郷の宮城や移住した先の山梨などの風景も重ねられている」という。
宮城県石巻市で生まれた紡木さんが、神奈川、山梨を経て、2025年夏から高山市上宝町に移住したのは、夫と共に、新たに開所された就労継続支援B型事業所〈自然栽培カフェ & ITワークス「高山上宝ベース」〉で働くためだ。
この場所では、WEB制作やデータ入力など在宅ワークをベースとしたIT作業や、無農薬・無肥料の自然栽培による米や野菜づくり、古民家を活用したカフェや宿の運営のほか、紡木さんが教える手芸も作業の1つに取り入れられている。利用者は各々の事情に合わせて在宅か通所、その日やる作業を選ぶことができるという。
「刺繍って最初から最後まで1人でする作業なので完成までの見通しがきくし、間違えてもほどいて縫い直せばいい。その達成感や安心感が精神的な安定につながるみたいです」。当初は事業に組み込まれていなかったこの作業も、今では1日中取り組む利用者が現れるほどに。
「針を持ったことがない人は玉結びの練習から始めて、ボタン付けや靴下の穴を繕うなど身の回りのことを。ステッチが身に付いたら、自分で刺繍の図案を考えて作品を作っています。まずは縫うことが楽しいと感じてもらえたらうれしい」と紡木さんは話す。
3月に行われる展示会では、紡木さんがこれまで制作してきた“手描き染め刺繍”の作品が並ぶ。「20年以上刺繍をしてきたのですが、新たな挑戦としてテーマを決めて作ってみようという気持ちが芽生えてきました。悲しいニュースが多いので“祈り”をテーマに取り組んでいます」と新作も制作中だ。
また利用者と共に作ったコースターやランチョンマット、ティーポットカバー、ブローチ、ぬいぐるみなど、会場となる飛驒産業〈HIDA〉の雰囲気に合わせた生活雑貨も展示される。
「当日は利用者さんと刺繍の実演もする予定です。観に来てくださった方に声をかけてもらえることが励みになると思います」。その一針が生み出す作品を観に展示会へ。























